各国の通貨を取引することができるFX。取引業者によっては20、30、更にそれ以上の通貨ペアを取り扱っており、それをウリにしているところもあります。しかし、数が多すぎるがゆえに、初心者であれば取引する通貨ペアを迷ったりすることもあるのではないのでしょうか。
「いったい、どの通貨でトレードを始めればいいの?」
そのような疑問を抱く方々のために、このページでは各通貨の特性や特徴、どのような経済状況によって値動きが起こりやすいのかを簡潔にまとめ、紹介しています。トレードを行う際の通貨選びにぜひ参考にしてみてくださいね。
FX初心者におすすめの通貨ペアは米ドル円(USD/JPY)
結論からいうと、FX初心者が最初にトレードする通貨ペアは米ドル円(USD/JPY)です。「どの通貨ペアから始めようか」と迷っている方は、とりあえず米ドル円から始めてみるのがおすすめ。
その理由は「値動きが滑らか」「スプレッドが狭い」「情報が手に入れやすい」からです。詳しくは次の通貨ペアの選び方で解説しますが、米ドル円はFX初心者に最適な環境が整った通貨ペアです。
他の通貨ペアと比べて値動きの幅(ボラティリティ)が狭く、FX初心者でもトレードがしやすくなります。米ドル円は世界的に見ても取引量が多い通貨ペアで、為替情報も豊富に出回っています。総合的に見ても米ドル円(USD/JPY)はFX初心者におすすめの通貨ペアです。
FX初心者が通貨ペアを選ぶときのポイント
値動きが緩やかな通貨ペアを選ぶ
FXの通貨ペアにはそれぞれ値動きに特徴があります。特定の時間帯によく動く通貨ペアや経済指標に大きな影響を受ける通貨ペアなど、通貨ペア毎の特徴を掴んでトレードをするのは大切なポイントです。特に、FX初心者であれば値動きの幅が大きい通貨ペアが高い通貨ペアは避けましょう。
ボラティリティが高いということは、1日でレートが大きく動きやすいということです。レートが動きやすい通貨はそれだけ値幅が取れる(利益が出やすい)というメリットがありますが、その分、リスク(損失が出る)もあります。FXに慣れていない方であれば、損切りするタイミングを見失ってしまい大きな損失を出してしまう場合もあります。
最初は、ドル円(USD/JPY)やユーロ米ドル(EUR/USD)など取引量が多く値動きが緩やかな通貨ペアから始めてみましょう。利確と損切りのタイミングや注文数量(ロット)の調整、資金管理に慣れてきたら他の通貨ペアにもチャレンジしていくのがおすすめです。
スプレッドに注目して選ぶ
FXの通貨ペアでは、通貨ペア毎にスプレッドが設定されています。スプレッドはFX会社によって異なり、同じ通貨ペアでも1回当りのトレードにかかるスプレッドは違います。スプレッドが広い通貨ペアは、その分だけ取引コストがかかるため、できるだけ狭いスプレッドの通貨ペアを選ぶのがポイント。
「スプレッドってよく分からないんだけど。」という初心者の方に向けて簡単に解説すると、スプレッドとは「買値と売値の差」です。FXでは、買値と売値が異なります。ポジションを持った瞬間にスプレッド差分のマイナスを抱えて取引がスタートすることになります。
米ドル円のスプレッドが0.3銭という場合、1万通貨の買ポジションを持つと30円のマイナスから始まります。そして、買うと同時にポジションを決済すると30円の損失が出ます。これがスプレッドといわれるもので、実質的にはFX会社に支払う手数料のようなものです。
このスプレッドはFX会社毎に異なるので、通貨ペアを選ぶときはトレードする予定の通貨ペアで狭いスプレッドを配信しているFX会社を選ぶのがポイントになります。
クロス円を選ぶときは米ドルの動きにも注意
FX初心者の方であればユーロ円や豪ドル円など、円が絡む通貨ペア(クロス円といいます)を選ぶ方も多いのではないでしょうか。円が入っているので、他の通貨ペアよりも安心できますよね。ただし、クロス円の通貨ペアを選ぶときは注意が必要です。
なぜかというと、「クロス円のレートは米ドルを介さないと決まらないから」です。簡単に説明すると、為替では米ドルが基軸通貨(取引の中心となる通貨)とされており、米ドルを含まない通貨ペアでも一度、米ドルに替えてから取引が行われます。
ポンド円を買う場合であれば、円で米ドルを買い、その米ドルでポンドを買うという取引を行っています。他の豪ドル円やユーロ円でも同じ取引が行われています。したがって、クロス円は相手となる通貨だけでなく米ドルの影響も受けるため、ドルストレート(米ドルが絡む通貨ペア)よりもレートの変動が激しい傾向にあります。
「説明が難しい」と思われた方は、まずは「米ドル円」や「ユーロ米ドル」といった米ドルが絡む通貨ペアでトレードするのがおすすめです。
FX初心者にはおすすめできない通貨ペア
上記では、FX初心者におすすめの通貨ペアを紹介しましたが、次は初心者の方は避けた方がいい通貨ペアを解説します。うかつに手を出すと手痛い損失を被る場合もあるので、注意が必要です。
ポンド絡みの通貨ペア
ポンドは別名「殺人通貨」ともいわれるほど、値動きが激しい通貨ペアです。一日で数円単位で動くこともよくあり、爆益が出ることもあれば大きな損失を出してしまう場合もあります。上の画像は、ヒロセ通商の50通貨の1ヶ月間のボラティリティ表ですが、上位にはポンド絡みの通貨ペアが常にランクインしています。
ポンドは他の通貨と比べても取引量の多い通貨ですが、ボラティリティが高いことでも有名な通貨です。FX初心者の方は手を出さないのが無難。FXのトレードに慣れてボラティリティが高い通貨ペアにも挑戦したいという方以外は避けておいたほうがいい通貨です。
高金利通貨
通貨にはそれぞれ発行元となる国が金利を設定しています。日本円は金融緩和政策によって超低金利(短期政策金利-0.1%)に設定されていますが、国によっては高い金利が設定されています。特に、トルコリラやメキシコペソ、南アフリカランドなどは高金利通貨として有名です。
その他にも、ルーブル(ロシア)や人民元(中国)なども比較的、高い政策金利が設定されています。これらの通貨ペアは総じて取引量が少なく、値動きが激しい傾向にあります(ボラティリティが高い)。また、一般的に金利が高いということは、それ相応のリスクがあります。FXでいえばその国の財政状況や経済状況に問題があり、簡単な要因で大きな価格変動が起きやすいというリスクがあります。
特に、スワップポイントなど長期間でのトレードが前提の場合、FX初心者は手を出さない方がよいでしょう。高金利通貨を取引する際は、しっかりとリスクを把握した上でトレードに臨むことが大切です。
トルコリラ円取扱い業者のスワップポイント・スプレッド一覧比較
マイナー通貨(エキゾチック通貨)
FXでは世界中の通貨ペアを取引することができます。その中でも主要通貨ペア(メジャー通貨)以外の通貨ペアのことを「マイナー通貨」と呼びます。マイナー通貨は総じてマーケットでの取引量が少なく、スプレッドが広い傾向にある通貨ペアです。具体的には、ユーロメキシコペソ(EUR/MXN)や米ドル人民元(USD/CHN)などです。
マイナー通貨は、米ドルや日本円と比べて為替情報が入手しにくいというデメリットもあります。ポーランドズロチやハンガリーフォリント、上記で紹介したトルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドなどもマイナー通貨です。マイナー通貨は高金利である場合も多く、通貨価値が安定しにくいためFX初心者は避けておいた方がいい通貨ペアです。
各通貨の特徴と注目の経済指標
次は、通貨ごとの特徴と関連する経済指標について解説していきます。通貨ごとの特徴を把握しておくと、相場分析する際に考える幅が広がるのでぜひ理解しておきましょう。
米ドル(USD)
米ドルは世界の基軸通貨であり、対米ドルの通貨ペア(ドルストレート)は世界中のトレーダーから注目されます。取引量が最も多く、世界全体の為替売買の約4割は米ドル相手の取引で占められていることからも、世界中で通用する通貨と言えます。日本国内で得られる情報も豊富なので、新聞やニュースなどを参考にした投資判断が行いやすいというメリットもあります。ドル円の取引高は1日あたり9000億ドル(※)ほどで世界第2の規模。近年では中国やインド、シンガポールなどのアジア圏諸国の経済成長が著しく取引高が年々増えています。FX初心者が最初にトレードするのであれば、米ドルが絡む通貨ペアがおすすめ。
※BIS(国際決済銀行)2016年4月の月間1日当りの平均取引高
雇用統計、ADP雇用者数、ISM製造業景況指数、貿易収支、GDP、FOMC、FRB議長発言、etc
ユーロ(EUR)
ユーロは第2の基軸通貨と言われている通貨です。ユーロはEU(欧州連合)で使用されている通貨で、EU加盟国19ヵ国と非EU加盟国6ヵ国の計25ヵ国で主に使われています。広域通貨であるがゆえに、加盟国のいずれかにおいて、例えばギリシャのような債務問題が発生した場合の対処が難しく、ユーロが売られ続ける原因となりがちです。ユーロの値動きは、EU加盟国のなかでも比較的経済が安定しているドイツの景況に左右されやすい特徴があります。また、ユーロ圏はロシアやアラブ諸国(アラブ首長国連邦、イラク、カタールなど)と地理的に近い関係にあります。中東での戦争や紛争といった経済危機はユーロ売りに繋がるリスクを持っているので、注意が必要です。
ドイツ、フランスの失業率、GDP、鉱工業生産指数、生産者物価指数、消費者物価指数、IFO景況感指数、ZEW景況感指数
英ポンド(GBP)
世界全体の為替売買の約7%を占める、取引量4位の通貨です。多くのトレーダーからは値動きの激しい通貨として認識され、一瞬にして大損をしてしまう可能性をはらんでいることから、一部では「殺人通貨」とも呼ばれてます。イギリスは2016年6月にEU離脱が国民投票で決定しましたが、現時点(2020年1月)で離脱は実行されていません。離脱の条件に関してイギリスとEUとの間で交渉がまとまらず、EU離脱は泥沼化しているのが現状です(ブレグジット問題)。イギリスのEU離脱問題はポンドの値動きに大きな影響を与えるので要チェック。また、イギリスは世界第9位の原油輸出国ですので、原油相場の動向にも注視しましょう。
GDP、CPI、PMI、ブレグジット問題、原油価格
豪ドル(AUD)
オーストラリアは石炭や鉄鉱石が豊富に獲れる資源国です。財政も資源輸出に依存しており、石炭や鉄鉱石、金といった資源の需要が高まると豪ドルの価格も上がる関係にあります。中でも、中国が輸出先の約3割を占めており、中国の経済が良くなると豪ドルも買われる傾向にあります。オーストラリアは他の先進国と比べて政治的にも経済的にも安定している国です。政治的、地理的な変動リスク(地政学的リスク)は比較的少ない通貨になります。
RBA(オーストラリア準備銀行)総裁発言、政策金利、貿易収支、消費者物価指数、中国の経済指標
ニュージーランド・ドル(NZD)
ニュージーランドはFXトレーダーの間で、「キウイ」という愛称が付けられている通貨です。オーストラリアとは地理的にも近く、経済的なつながりを持つため、豪ドルと同じような方向に動くことがよくあります。ただし豪州とは輸出資源の品目に違いがありますので(豪州:鉄鉱石 NZ:乳製品)、豪ドルと必ず連動すると思っていると痛い目に遭うので要注意。ニュージーランドもオーストラリアと同様、中国が最大の輸出国になります。NZドルは農産物価格の変動や中国経済の景況感に影響されやすい特徴があります。
RBNZ(ニュージーランド準備銀行)金融政策、貿易収支、農産物価格(乳製品)の変動、中国経済指標
カナダ・ドル(CAD)
カナダの原油埋蔵量は世界第2位であり、豊富なエネルギー資源を有しています。したがって、カナダドルは原油価格に大きな影響を受ける資源国通貨です。原油や金属、鉱物相場などの資源価格と連動しやすいという特徴があります。また、カナダは地理的・経済的にアメリカと強い繋がりのある国です。カナダ・ドルも米国の影響を大きく受けるため、米ドルと連動しやすいという測面もあります。
BOC(カナダ銀行)金融政策、米FRB(連邦準備制度理事会)金融政策、アメリカの経済指標、原油価格
スイス・フラン(CHF)
スイスは永世中立国であり、伝統的に低インフレの経常黒字国です。国の財務状況は良く、堅実な財政を維持し続けています。そのためリスク回避を目的としたフラン買いが行われることがあります。日本円もリスク回避のために買われる傾向がある通貨なので、スイスフランと似た側面があります。また、スイスは世界的に見て金保有量が多い国です。金相場が上昇する際はスイスフランも連動して上がる可能性が高いので要チェック。基本的に、安全資産として扱われていますが、2015年に起ったスイスショックのような問題が起ることもあるので、気が抜けない通貨でもあります。
失業率、貿易収支、KOFスイス先行指数
南アフリカ・ランド(ZAR)
南アフリカは世界屈指の鉱山資源国で、金やプラチナ、ダイヤモンドなどの鉱物が豊富に獲れる国です。他の資源国と同様、資源の輸出が主な外貨獲得の手段のため、鉱物の商品価格に大きな影響を受けます。また、大きな特徴として南アフリカランドは高金利が魅力的な通貨でもあります。スワップポイントを狙うのであれば、注目したい通貨です。しかし入手できる情報が少なく、値動きが大きいため保持するリスクは少なくありません。FX中上級者にとってもトレードが難しい通貨なので、FX初心者は手を出さない方がよいでしょう。世界の株価との連動することもあるので、それらに関連する経済指標を見るのもポイントです。
GDP、CPI、鉱物の商品相場(金、プラチナ、ダイヤモンド)、世界各国の中央銀行による金融政策
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